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3.11東日本大震災から5年。映画『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』の高校生たちを通して知る、東北のいまの姿【最新シネマ批評】

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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、2015年3月10日にNHKで全国放送されて話題となったドラマの劇場版『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』(2016年1月23日公開)です。監督は、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」や、阪神・淡路大震災の15年後の神戸を舞台にした『その街のこども 劇場版』を手がけた井上剛。

3.11の東日本大震災でで被災し、離ればなれになった同級生たちが、立ち入り禁止区域内の母校へタイムカプセルを掘り起こしに行く姿を追ったロードムービー。成長して高校生になり、被災地に戻って何を思うか……というところが実に興味深い作品です。では、さっそく物語をご紹介していきましょう。

【物語】

東日本大震災で被災した朝海(石井杏奈)は神戸に引っ越して、高校生活を送っていました。ある日、彼女のもとに故郷に暮らす同級生の本気(前田航基)からメールが届きます。

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それは、今は立ち入り禁止区域に指定されている母校へ、昔埋めたタイムカプセルを堀りに行かないかというもの。同じメールが他の友人にも届いており、朝海は友人たち+音楽教師(渡辺大知)とともに故郷へと向かいます。

彼らは震災からあまり変わらない、傷ついた故郷と向き合うことになるのですが……。
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【震災は起こってしまったこと。被災地の瓦礫は日常になる】

東日本大震災からしばらくたち、数々の震災関連の映画やドラマが作られました。ドキュメンタリーがあれば、フィクションもあり、その中でも国民的な人気を得たのは「あまちゃん」。震災の前後の時期を舞台にした素晴らしい人間ドラマ。あのドラマを演出したのが井上剛監督です。

この映画のヒロイン・朝海は、福島から神戸に引っ越したあとも、どこかモヤモヤした思いを抱えています。神戸も、阪神・淡路大震災で大変だったことがわかっているけれど、福島の方がもっと大変だというような、無神経とも取られる発言をしたりするのです。

朝海と同級生が久々に訪れた故郷は、あのときからあまり変わっていない。その現実をまざまざと見せつけられた彼らは「まだ震災は終わっていない」と思っているし、震災で命を落とした人の分まで精一杯生きる……ということがプレッシャーにもなっています。

そうなんですよ、震災はまだ終わっていないんです。でも起こってしまったことを変えることはできないし、その中でみんな暮らしています。瓦礫の山も、立ち入り禁止の母校も、被災地の方たちにとっては日常の一部であり「今元気でいることは幸運だ、頑張らなくちゃ」と思うことも、今や当たり前。ときどき、しんどいなと思いながらも……。

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でも肉体の傷が言えても、心の中まではなかなか変えられないんですよね。そんな思いが高校生たちの口から素直に語られていきます。みんないまどきの高校生で、かわいいんだけど、ときどき心にズシンとくる言葉を言うのです。

【若手キャストはE-Girls、NMB48、黒猫チェルシーのメンバー】

ヒロイン朝海役は、女性グループ「E-girls」の石井杏奈。メンバーの中でも本格的に女優業にも力を入れ、映画『ソロモンの偽証』でも熱演しています。そして、朝海の同級生の香雅里役は「NMB48」の木下百花。

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また、朝海の音楽の先生役には、映画や舞台主演の経験を持つロックバンド「黒猫チェルシー」の渡辺大知。そのほか、ともさかりえ、南果歩、津田寛治、二階堂和美、皆川猿時らが助演として彼らを支えています。

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実は石井杏奈さんをはじめとする若いキャスト陣は、東北へ行くのは初めて。井上監督はドキュメンタリーのように、彼らがこの地で何を見て、どう感じたかを丁寧に映し出しています。

監督が動きを限定することなく、自由に動いて演技してもらいながら、まとめるところはまとめ、彼らが役の気持ちを想像して表現できるように演出したそうです。その結果、監督にかなりしごかれることになったようですが、やがて役柄と本人とが少しずつ同化するように。台本には「泣く」と書いていないのに、自然に涙を流したり……ということがあったそう。

それゆえに、素直な彼らの気持ちがスクリーンから立ち上がってきて、観ていて本当に胸をグっとつかまれます。彼らと一緒にそこに立っているような、追体験をしているように感じるのです。

2016年3月11日で、東日本大震災から5年経ちます。あの地が今も変わらないことを知ることが大切なのかもしれません。『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』は、それを私たちに伝えてくれる映画です。

執筆=斎藤 香(c)Pouch

『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』
(2016年1月23日より、シアターイメージフォーラムほか全国順次ロードショー)
監督:井上剛
出演:石井杏奈、渡辺大知、木下百花、柾木玲弥、前田航基、津田寛治、二階堂和美、皆川猿時、ともさかりえ、南果歩、中村獅童ほか
(C)2015 NHK

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オリジナル記事: 3.11東日本大震災から5年。映画『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』の高校生たちを通して知る、東北のいまの姿【最新シネマ批評】
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