シゴト・オトコ・キレイ-オンナ目線のキュレーションサイト

違和感を受け流さないで。広告で社会をよくするために私たちができること

なぜか同じように繰り返されるCM炎上。「どうしてこのCMが誕生したの? 制作過程で気づかなかったの?」と思ったことがある人も多いはず。炎上ポイントはさまざまですが、特に男女の描かれ方に起因するケースが多いようです。

そのような「これってどうなんだろう?」というCMについて考えるパネルディスカッション「CMから男女の描かれ方を考える」が(公財)横浜市男女共同参画推進協会と(公大)横浜市立大学の連携企画により、10月19日、横浜市立大学エクステンション講座(企画・監修:佐藤響子教授)として、開催されました。

その様子を再構成・編集して3回に分けてお届けします。

(左から)梅田さん、鈴木、武田さん、haru. さん

(左から)梅田さん、鈴木、武田さん、haru. さん

<登壇者>
モデレーター 治部れんげ:ジャーナリスト
梅田悟司:クリエーティブ・ディレクター
鈴木円香:ウートピ編集長
武田砂鉄:ライター
haru. :大学生、HIGH(er) magazine 編集長
(敬称略)

今日、広告を見なかった人はいる?

梅田:ここからは、ジェンダーの視点で広告業界は今どうなっているのか、海外の例も含めてお話ししたいと思います。まず、こんな質問から始めます。今日ここに来るまで、広告を見なかったと断言できる人はいますか?

電車で来た人は電車の中で必ず見たはずです。スマホを開いた人は、スマホの中の広告を、街を歩いている中ではポスターを見たでしょう。現代ではおそらく、広告を避けるとか、見ないというのは基本的にできない状態にあると思うんです。

その中で広告は、どういう役割を担っているのか。企業の視点から考えると、モノを売るために行うものなのですけれど、生活者にとって、広告はすでに環境の一部になってしまっている、ということが言えるはずです。

みんながポジティブな気持ちになるような広告を

梅田:その中で、トレンドになっているのが、「ソーシャルグッド」。みんなが見るものだから、みんながポジティブな気持ちになるような広告をやるべきじゃないのかという考え方です。

直訳すると、「社会的に見て、いいこと」なわけですが、要するに、商品を売るだけでも、知名度をあげるだけでもなくて、社会の課題を解決するような、社会にいい影響を与えるような広告を作りましょうというのが大きな流れとして存在しています。このソーシャルグッドの中には、ジェンダーの問題とか、LGBTの問題も含まれています。さらに、配慮、啓蒙、行動という3つのテールで話したいと思います。

配慮とは、男女は平等に描かれるべきであるということなど、気を配るマストな項目です。2017年にはイギリスの広告基準協議会で、「性別に対するステレオタイプのようなものは無くしていきましょう」というようなことが規制としても行われています。

パナソニックや日本コカ・コーラ行う啓発活動

梅田:日本は配慮の先の、啓蒙まできているはずなんですね。具体的に言うと、男女の新しい関係性を具体的に表現して行きましょう、という段階。例えばパナソニックの広告では、西島秀俊さんが積極的に家事をこなしていますよね。それが示唆するものとしては、女性がやっていたことを男性もやったほうがいい、やっているのって当たり前だよねということ。

僕が手がけた案件でも、日本コカ・コーラのジョージアという缶コーヒーの広告があげられます。今までは山田孝之さんを中心に、男性のみで働く世界観を描いていたのですが、昨今では商品の変化に伴い、山本美月さんらがCMに参加するなど女性や若い方にも拡張しながら啓蒙をしています。

海外の事例

梅田:行動の部分はまだ日本の事例が少ないので、海外の事例をお持ちしました。what to say(何を言うか)だけではなくて、what to do(何をやるか)という部分。行動とともに意思表明するのが実際に海外では多く行われています。

国連の取り組みでもあるSDGsには、17の目標が世界みんなで到達するべきゴールとして定められています。この5番に「ジェンダー平等を実現しよう」とありまして、その項目に沿った事例では、アメリカのウォール街あるブル像の前に、立ち向かう形で少女のモニュメントが設置されました。これまで、そのブル像は男性社会の象徴でした。それに立ち向かって行くというので、モニュメントが設置されたのです。

国際女性デーに、女性が店長をしている店舗のマクドナルドの看板が「M」から「W」に変わったという事例もあります。これも行動ですよね。何を言うかだけでなく、何をするかによって企業は広告をはじめようとしているのです。

そういった広告や活動が企業の成長率につながるのか。実は、かなりつながることが証明されています。「いいことをやった。以上」ではなくて、ちゃんとビジネスに繋がっていると示されたんです。企業が伸びればそれでいい。そういう時代は終わったということですね。企業の発展とともに社会課題を解決していくという2点を同時に考えていくのが、スタンダードになりつつあるのです。

言い続けるのはパワーがいるけれど…

武田:女性芸人がイジられる番組を見たり、最近の話題でいえば、LGBTについての寄稿をめぐって『新潮45』が休刊に至った経緯を見たりしていると、どうしてこんなことばかりが続くのだろうと脱力してしまいます。でも、こういった議題をひとつひとつ検証し、よろしくない言動があればその都度、突いていかないといけない。こういったジェンダーの問題を討議するときに、いつまでも「諸外国ではこうなっているのに日本は……」を繰り返すだけではいけない。改善するには「これはダメでしょう」と言い続けるしかないんでしょうね。

治部:言い続けるって結構エネルギーがいりますよね。

haru.:私がオープンに話をするのは、私みたいに23歳の何者でもない大学生が、当たり前のことを当たり前に言っているという、その事実が大事なのかなと思っているんです。

年齢を重ねたりとか、肩書きがついたりすると、「まぁあの人が言うなら……」みたいになるじゃないですか。例えば、大御所の芸人さんが自分の意見を言って、周りの人は批判しないというような。自分の意見が常に正しい状態って危険だなと思っていて。だから、なんでもない私が、社会的な問題について話しているとか、ジェンダー、セックスについて普通に話す、言い続けると言うのが大事かなと思っています。すごく体力はいるんですけど。

武田:ある発言や原稿に「これはおかしいと思う」と意見をぶつけると、バトルしている構図が生まれてしまうことがあります。本来、議論するレベルですらない、あまりにも誤解が多い、だから「それ、おかしいですよ」と伝えているのに、いつのまにか「どっちが正しいか、どっちが勝つか」という争いごとに発展してしまう。

すると、どっちもどっち、みたいな結論に持っていかれがち。「えっと、じゃあ、LGBTを認めますか、認めませんか?」なんて、その議論の設定自体がそもそもおかしいわけですから。

モヤッとした時の感覚を受け流さないで

治部:私もずっとジェンダーのことを書いていて。正直、疲れることがあります。「どうしてわざわざこんなことを大人に説明しなきゃいけないんだろう」と思うと、すごく脱力する。そういうときは、年齢が違う人と話すといいと思っています。今年の春、財務省のセクハラ問題で脱力したときに、10歳になる息子に軽くその話をしたんです。彼の反応はすごくシンプルでした。「その人は逮捕されたの?」「クビになったの?」と。年齢が違う人の目線って、本質を言ってくれることもあるんじゃないかなと思いました。

梅田:このパネルディスカッションのテーマは、メディアの問題でもあるんですけど、最後は個人の問題に帰ってくるはずだと僕は思います。みなさんの中に差別はないかもしれないけれど、区別は絶対にあるはず。そのような無意識のものを、まずは意識して、次に突破することが大事だと思います。そこを突破して初めて原体験が生まれるはずなので。社会全体の問題という大きい視点もあれば、自分の中にある問題として受け止めてみるということが一番有効なんじゃないかなと思います。

鈴木:問題に気づくにはどうしたらいいか。一つは流さないということではないでしょうか。CMって流してしまいがちだと思うんですよね。ちょっとイラっとか、「ん?」と思っても、自分の中で言語化しないで流して忘れてしまう。何かに引っかかったときに、なぜそれに引っかかるのか言語化して、雑談レベルで話せる感じになっていけばいいのかなと思います。自分が感じたことを言語化する。

武田:これからも、定期的にこういったCMが出てくるのだと思います。鈴木さんがおっしゃったように、慣れるのではなくて、違和感を覚える。そして、違和感を覚えますと表明し続けることで、作る側が先んじて、こういうものを作るべきではない、と気づくかもしれない。意見を表明することを絶やさないようにするのが大切なことなのかなと思いました。

haru. :メディアや作り手は読み手とか受け取る人のことを絶対ナメちゃダメだなと思います。受け取る側の人も、作り手側の人にナメられないためにも、自分の意思で何を選択するかが大事になってきているんだなと思いました。

(構成:ウートピ編集部 安次富陽子)