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話題作「空海-KU-KAI-美しき王妃の謎」の主役は空海じゃない!? もったいないくらい壮大で華麗な “珍作” でした…【本音レビュー】


【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』(公開中)。『さらば、わが愛 / 覇王別姫』などで知られる中国映画界の名匠チェン・カイコー監督作で、空海を染谷将太さんが演じています。

タイトルに “空海” とあるので、「空海の歴史ドラマか?」と思ったら大間違いです。これはサブタイトルに『美しき王妃の謎』とあるように、空海が楊貴妃の死の謎を解きあかす伝奇ミステリー映画。原作は夢枕獏さんの小説「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」です。

約10年前に日中合作映画として製作が決定した大作ですが、これがけっこうな珍映画だったのです。さっそく紹介していきましょう。(以下、ネタバレを含みます)

【物語】

遣唐使として中国王朝の唐に渡った空海(染谷将太)は、詩人の白楽天(ホアン・シュアン)と交流を深めていくなかで、長安で権力者が次々と奇妙な死に方をするという怪事件に遭遇。

空海は白楽天と共に事件を探っていくと、楊貴妃の謎に行きつきます。怪事件と楊貴妃の謎を結ぶものとは……?

【空海探偵が難事件に挑む】

あまり情報を入れずに見たのですが、見たらビックリな映画でした。本作での空海の役割は探偵です。そして、詩人の修行中の身である白楽天は、空海探偵のアシスタント

長安で起こる権力者殺人事件を調べる二人は、まるでシャーロック・ホームズとワトソンみたいなのですよ。

白楽天は玄宗皇帝と楊貴妃を詠った「長恨歌」(玄宗皇帝と楊貴妃を詠った詩)をもとに謎に踏み込み、空海が機転を効かせたり、推理をしたりして関連する人物に迫っていく。このコンビは良かったですね。二人組を主人公にしたバディ・ムービーの雰囲気さえありました。

ただ、空海の人となりがわかる映画ではありません。タイトルロールになっているわりには、演技派の染谷さんが演じても空海のインパクトがあまりなかったのが残念。

なぜなら、主役は別にいたからです。それはなんと「猫」でした。

【主役はベラベラしゃべる猫?】

作中で、楊貴妃は謎に包まれた死を遂げるのですが、その真相に迫る過程には多くの人物が関わっています。

そこで強烈な存在感を示していたのは、冒頭から登場する黒猫なんです。もちろん、ただの猫ではなく妖猫。この猫がすべての怪事件の鍵を握っているのです。

しかしこのしゃべる猫が、私的には違和感ハンパなかったです。怪事件や楊貴妃の謎に関する重要なセリフは、ほとんど猫がしゃべっているような……。実はこの猫、楊貴妃の死の謎を知る幻術師が乗り移っているのです。

これは邦画タイトルにも責任の一端はあり、中国での公開タイトルは「妖猫伝」。だから、空海の存在がいまひとつだったというわけです。「空海の映画」でアピールした方が興味を惹きますし、日本なりの売り方があるのはわかるのですが、これは勘違いする人が多いと思う。

これから見る方は、ベラベラしゃべる猫に面くらったりしないように要注意です。

【なせ日本語吹替え版に?】

この作品、日本では日本語吹替え版しか上映していません。染谷さんや、阿倍仲麻呂を演じた阿部寛さんなど、日本人の俳優も中国語で演じていたのに、字幕版がないのが謎。

伝奇ミステリーで中国のエキゾチックな世界観も楽しめる映画なので、字幕で見た方がより入り込めると思うのですが……複雑な人間関係をわかりやすくするために日本語吹替え版にしたのかな?

ただ、高橋一生さんのファンなら、白楽天の声を吹替えている高橋さんをピンポイントで楽しむというのもあり! 高橋さんの吹替え、良かったですよ。とても自然に役を演じていて、一瞬、誰が吹き替えているのはわかりませんでしたから。

【美術と衣裳は見どころたっぷり】

なんだかんだとマイナスなことも書きましたが、『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』を見る時はやはりスクリーンで見た方が良いです。とにかく美術と衣裳がスゴイ! 長安のシーンはなんとオープンセット。広大な敷地に町をひとつ作ったくらいの驚きのレベルで、なんと建設期間6年!

グリーンバックで撮影してCG処理という方法だってあったとは思うのですが、それをしなかったのですね。これは名匠チェン・カイコー監督のこだわりでしょう。カイコー監督は『始皇帝暗殺』でも、紀元前3世紀の建造物セットの完全復元をした監督ですから。

また、楊貴妃はじめ女優陣の衣裳もキラキラゴージャス! 若干盛りすぎな印象はありますが、美術と衣裳の気合いの入り方はハンパなく、これは観る価値あると思います。

壮大で美麗、珍作な趣の『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』。見る前に夢枕獏氏の原作を読むか、楊貴妃、白楽天など人物の予習をしておくと、より楽しめると思います。




執筆=斎藤 香 (C) Pouch

『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』
(2018年2月24日より、TOHOシネマズ日本橋ほか全国ロードショー)
監督:チェン・カイコー
出演:染谷将太、ホアン・シュアン、チャン・ロンロン、火野正平、松坂慶子、阿部寛
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