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新参者シリーズでいちばん泣ける最終作『祈りの幕が下りる時』は報われない親と子の愛情に号泣するミステリー【最新シネマ批評】


【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が最新映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、レビューをします。

今回ピックアップするのは、東野圭吾原作のミステリー小説を映画化した『祈りの幕が下りる時』(2018年1月27日公開)です。

阿部寛主演の連続ドラマ「新参者」の劇場版第3弾。今回が完結編で、最高傑作と言われています。見る前は「またまた、大げさな」と思いながら試写を見せていただいたのですが、終わる頃には感動して泣いていました……。

複雑な人間関係の果てに明らかになる真実に、涙が止まらない作品です。では物語の説明からいってみましょう。

【物語】

葛飾区のアパートで女性の絞殺死体が発見されます。そのアパートの住人の男は行方不明。やがて警察の捜査によって、事件の関係者として著名な舞台演出家の浅居博美(松嶋菜々子)の名前があがります。しかし、彼女には事件当時のアリバイがありました。

殺害現場には遺留品としてカレンダーが残されていたのですが、そこには日本橋に近い12の橋の名が書かれていました。加賀恭一郎(阿部寛)は、“12の橋”と聞いて動揺します。それは失踪した彼の母(伊藤蘭)に繋がることだったからです。

【複雑な人間関係に隠された意外な人物同士の接点】

今作の前半では、捜査チームが事件を追いかけ、次々と関係者が浮かび上がっていきます。そして12の橋が登場すると俄然、主人公の加賀にスポットライトがあたるのです。なぜなら12の橋は、彼の亡き母が同じようなメモを持っていたからです。

前半は事件の人間関係が複雑で、見ている方は追いかけるのに必死になります。なぜなら、関係のないと思われる人物が過去に繋がっていたりするからです。例えばこの事件では、加賀はこの殺人事件が起こるずっと前に、浅居博美に会っています。彼が剣道を教えていたとき、浅居は劇団の子役を連れて会いに来て、子役の指導をしてもらっているのです。

そして容疑者の越川と加賀の母も知り合いであり、物語が進むにつれて「なんで知り合い?」「事件と関係あるの? どうなっているの?」と混乱します。しかし、この複雑な人間関係の背景には、壮絶な不幸を乗り越えようともがき続けてきた家族の絆があったのです。

【事件の鍵を握るのは浅居博美の過去】

事件をひも解く鍵は、浅居博美。事件の真相は彼女をとりまく人間関係を軸に広がっています。浅居は成功者ですが、そこにいたるまでは苦労しています。母に捨てられ、父は自殺。養護ホームで育った女性だったのです。

被害者女性は、そんな浅居の過去を知る人でもありました。そして、彼女が殺されたのは劇場に浅居を訪ねてきたあと。ネタバレぎりぎり覚悟で書きますと、彼女は殺害現場である越川宅にあったカレンダーに書き込まれた橋のひとつで目撃されています。越川、加賀の母、浅居があの12の橋に関連しているのです。

おそらく最初は、複雑な人間関係に混乱するでしょう。でもその複雑さが、本作のトリックなのです。


作者は浅居博美を巡る人間関係に秘密を含ませていますが、全てが明らかになると、その複雑さには理由があります。

真犯人は狙ってそうしたわけではなく、そうしないと生きていけなかったのです。そこが泣けるんですよー。親と子がお互いをこんなに思いやって生きているのに、何て神様は残酷なのだろうと。殺人は罪ですが、そうしないと生きていけない世の中って何なの! とさえ思いました。

東野圭吾ファン、「新参者」シリーズのファンも含め、誰が見ても楽しめる年齢を問わない映画です。カップルや友だち同士での鑑賞はもちろん、家族にススメてもOK。「新参者」シリーズの最高傑作を堪能してください!

『祈りの幕が下りる時』
(2018年1月27日より、TOHOシネマズスカラ座ほか全国ロードショー)
監督:福澤克雄
出演:阿部寛、松嶋菜々子、溝端淳平、田中麗奈、キムラ緑子、烏丸せつこ、春風亭昇太、伊藤蘭、小日向文世、山崎努ほか
(C)2018 映画「祈りの幕が下りる時」製作委員会