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女性に多い「隠れ貧血」…血液検査でもわかりにくい理由は? 専門医に聞きました【後編】

前回の夏バテと間違わないで! 初夏から貧血が増える理由を専門医に聞きました【前編】では、夏バテによる脳貧血と鉄が欠乏することによる貧血(鉄欠乏性貧血)の違い、貧血の診断基準や血液検査の見かたなどについて紹介しました。

今回は、女性に多く、健康診断の血液検査ではわかりにくいという『隠れ貧血』について、前編にひき続き、臨床内科専門医で女性外来がある正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長に詳しく聞いてみました。

【前編】夏バテと間違えないで!初夏から貧血が増える理由を専門医に聞きました

20~40代の女性に多い「隠れ貧血」が危険

前編で、貧血とは一般に鉄欠乏性貧血のことを言うと教えてもらいました。はじめに正木医師は、「しんどくても鉄欠乏性貧血の自覚症状がなくて、疲労や夏バテと思い込んでやり過ごしているケースはとても多く、それが危険」と、次の注意を促します。

「とくに女性は月経で毎月多量の鉄を失います。血液検査の結果、ヘモグロビンの数値は基準値以内であっても、実は体内では鉄が不足している状態は珍しくありません。この場合、鉄欠乏性貧血だとは診断されませんが、体調はすぐれないままで、多くの場合、治療をしないと治りません。

いま、この状態は病態のひとつであることがわかっています。『潜在性鉄欠乏症』と言い、検査では貧血の数値ではないけれど、放っておくと鉄欠乏性貧血という、前編で説明した病気になる可能性が高くなります。これを通称『隠れ貧血』と呼び、月経がある女性に多い症状として注視されています」

隠れ貧血は「貯蔵鉄」を表わす数値で見極める

「隠れ貧血」は、ヘモグロビンの数値は基準値以内ということですが、ではいったい、どのようにして見つけることができるのでしょうか。正木医師は、こう説明を続けます。

「鉄が不足しだすとまず、ヘモグロビンの数値に表れる前に、肝臓などに蓄えている『貯蔵鉄』と呼ぶ鉄が減少します。貯蔵鉄の状態は、特別な血液検査の『フェリチン』という項目でわかります。フェリチンが10㎎/dl以下の場合は鉄欠乏状態と判定されます。フェリチンが低下する病態は鉄欠乏性貧血以外にはないため、確定診断となります。

このフェリチンは、健康診断など一般の血液検査では検査項目外になるため、隠れ貧血が見逃されがちになるのです。過去に貧血になったことがある、また、前編で伝えたチェックポイントから貧血かもしれないと思う場合は、医師に必ず伝えてください」

レバー、アサリ、イワシ…鉄が豊富な食材を食べる

次に、貧血を予防するにはどうすればいいのかについて、正木医師は、
「第一の方法は、食事で鉄を補給することです。1日3食、栄養のバランスが整った食事をとりながら、おかずに、鉄の多い食材を意識して取り入れてください。それにはまず、鉄をどれくらいとる必要があるのかを理解しましょう」と話し、次のアドバイスを続けます。

「成人女性では約0.8mg、男性では約1mgの鉄が1日に流出しています。月経がある女性はさらに、1日あたりに換算するとさらに約0.5mgの鉄を失っています。この分量の鉄を食事から補う必要があるわけです。

成人(30~69歳)が1日の食事から鉄を摂取する量は、月経のある女性では10.5mg、成人男性では7.5mgが推奨されています。数字ではイメージしにくいと思いますが、鉄が豊富な豚レバー80グラムには、鉄が約10㎎含まれています」

食品に含まれる鉄には、「ヘム鉄」「非ヘム鉄」があると聞きますが、どう違うのでしょうか。

「摂取したときに、体内での吸収率が異なります。ヘム鉄のほうが吸収率が良くて10~20%、非ヘム鉄は2~5%です。

ヘム鉄は肉の赤身、青魚、乳製品、特にレバー、アサリ、カツオ、イワシなど動物性食品に多く含まれています。

非ヘム鉄はホウレンソウやコマツナなどの青野菜や豆類など植物性食品に多く含まれていて、ビタミンCやカルシウム、タンパク質と一緒に食べると吸収率が高くなります。それに、造血に作用するビタミンB6やB12、葉酸などのB群、また適量の糖質や脂質も必要です。

ビタミンCが豊富な食品は緑黄色野菜や果物、葉酸が多い食品は鶏レバーやホウレンソウ、グリーンアスパラガス、ブロッコリー、シュンギク、イチゴ、納豆など、ビタミンB12が豊富な食品は豚レバー、アサリやシジミ、チーズなどです」と正木医師。

実際には、ヘム鉄か非ヘム鉄かのどちらかのみを食べるわけではないため、正木医師は、
「例えば、赤身の牛肉と青野菜の炒め物に、ビタミンCや葉酸が豊富なオレンジを選ぶ、レバニラ炒めとヒジキと豆の煮ものとイチゴ、緑黄色野菜のサラダとアサリとホウレンソウのパスタなど、動物性と植物性の食品をバランスよく食べ合わせることがポイントです」と強調します。

鉄の調理器具から鉄分が摂取できる

ここで正木医師は、調理器具についてもアドバイスを加えます。

「鉄の鍋やフライパンで調理をすると、鉄が料理に溶け出すため、食材に加えて鉄の摂取量を増やすことができることがわかっています。時間を長くかけること、焼く、炒めるよりも煮込むこと、またトマトソースなど酸を含む食材を使うと、より効率的に鉄が溶けるので、実践してみてください」

さらに、食生活については、
「無理なダイエット、例えば、一品だけを食べる、一食をドリンクに置き換える、炭水化物をまったく食べないなどや、逆に、唐揚げなど揚げ物ばかりを食べる、一食を菓子パンやケーキだけにするといった偏食は栄養不足になって貧血にとってよいことはないので、避けてください」と正木医師。

最後に、医療機関での治療法について、正木医師はこう伝えます。
「食生活の見直しと実践法の指導と、必要に応じて鉄剤の飲み薬による治療を行います。鉄欠乏性貧血の場合、こうして2週間~3カ月で改善するケースが多くみられますが、再発も多いため、日ごろの食生活が非常に重要であると言えます」

「隠れ貧血」という状態が女性にとても増えていること、また、貧血を予防するには、日ごろから鉄の成分が豊富な食生活を意識する必要があるということです。不調がつらい場合は、「夏バテによる脳貧血」か、「鉄の欠乏による貧血」なのか、それとも「隠れ貧血」なのかを医師に相談して見極め、早めに対処したいものです。

(構成・文 品川 緑 / ユンブル)