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夫婦別姓、保育園、義理親との関係…結婚とジェンダーについて“フェミ友”と語ってみた

縁あって2年前に結婚をし、毎日パートナーと楽しく暮らしているものの、「結婚とは何か」がまだイマイチ言語化できていない桃山商事の清田が、様々な方たちとの対話を通じて学びを深めていくこの連載。

今回は、性暴力やジェンダー問題などを中心に精力的な執筆活動を続け、『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(タバブックス)の著書もあるライターの小川たまかさんと、毒母問題のパイオニアにして、自らの夫婦生活や子育て体験を当事者研究的なアプローチで描き続ける漫画家の田房永子さんをゲストにお招きした。

お二人とは長い付き合いの同業仲間であり、日々グループトークでジェンダー関係の話題をシェアし合う“フェミ友”でもある。そんな二人と語らってみたいのが、結婚生活におけるジェンダーの問題についてだ。

結婚生活を送っていると、自分がメディアで発信していることと矛盾をきたしそうになる瞬間が結構ある。二人にもそういう経験はあったりするのだろうか。あるとしたら、それらとどう向き合っているのだろうか?

(左から)田房さん、清田さん、小川さん/イラスト:田房永子

(左から)田房さん、清田さん、小川さん/イラスト:田房永子

夫婦別姓が希望だけど事実婚は難しい。じゃあどうする?

清田隆之(以下、清田):結婚というものには、至るところにジェンダーの問題が入り込んでいるように感じます。例えば結婚式や名字をどうするかといった問題にはモロにジェンダーが関わってくるし、家事をどう分担していくか、「主人」や「奥さん」と呼ばれたときはどう反応すればいいのか……など日常のちょっとしたシーンでも男女の性別役割を意識させられることが少なくない。

田房永子(以下、田房):わかる。あるよね。

清田:そういうとき、自分の中に矛盾や葛藤を感じることが多々あって……。というのも、自分はかなりフェミニズムの影響を受けていると思うし、書き手としても女性蔑視や男性優遇社会的なものを問題視する記事を書いているけど、はたしてそれを実生活で実践できているのかというと、自信を持てなくなる場面が正直ある。

小川たまか(以下、小川):あ〜、ちょっとわかるかも。清田さんは例えばどんなときにそれを感じる?

清田:結婚するにあたってまず考えたのが「夫婦別姓」の問題だったのね。個人的には「選択的夫婦別姓」が早く認められるようになればいいと考えているし、結婚したらどちらかが名字を変えなきゃいけないことにも疑問があったから、当初は別姓を提案したい気持ちがあった。現状の制度では別姓にするなら入籍なしの「事実婚」という形を取る必要があるわけだけど、うちの両親や妹からは大反対を食らった。で、そのことを含めて結婚相手(以後「しおちゃん」と呼びます)に相談してみたのよ。

小川:なるほど。別姓が希望だけど事実婚は難しい、でも入籍してどちらかが名字を変えることにも抵抗がある……という葛藤があったわけですね。それでしおちゃんはなんて?

清田:彼女は事実婚でも入籍でもどちらでもいいというスタンスで、「私は名字を変えることに抵抗はない」と言っていた。一方の自分は、よく考えたら名字が変わるなんて生まれて一度も発想したことがないな……と思ったのね。それを伝えたら、「じゃあ私が清田になるのでいいんじゃない?」と彼女は言い、そのままスーッと決まってしまった。

小川:私も結婚のときに夫の姓になったけど、「小川たまか」というペンネームは変わらないから、別に本名が変わってもいいやって感じだった。例えば自分が会社員で、仕事の名前が変わるってなったら嫌だったかもしれないけれど。

「夫の実家に行くのがつらい」問題とは

清田:女友達に話を聞いたら、女子は思春期に一度や二度は自分の名字が変わることを妄想した経験があって、なんならちょっとわくわくしたりもしているって話していたんだけど、そういうことって実際にあるの?

田房:うんうん。好きな人の名字で自分の名前を書いたりしてね(笑)。そういうの私もよくやったよ。私も夫の姓になったんだけど、結婚当時は親との関係に疑問が噴出していた時期だったから、親と同じ名字なのが本当に嫌で、正直すごく助かったんだよね。名字を自然に変えられることがすごくうれしかった。

清田:そっか、そういうケースもあるのか。

田房:ただ、そういう気持ちがひと段落したあとに、夫婦別姓を求めた訴訟の話とかをニュースで知り、「籍を入れる」という制度に段々と理不尽さを感じるようになったってのはある。

小川:私も戸籍ってものにはちょっと違和感があって、結婚して本籍が夫の出身県になったんですよ。私は最初、父の実家がある和歌山に籍があって、そのあと出生地の東京に移ったんだけど、そこからいきなり縁もゆかりもない土地に飛ばされた感じがして、夫の出身地は好きだけど、一緒じゃないといけないのかなあという気持ちには正直なった。しかもそのことを母に話したら、「そういうところは合わせておきなさい」と言われ……。うちの母はずっと教師として働いていて、どちらかというとリベラルなタイプの人だったから、そういうことを言うのはちょっと意外だった。

田房:前、ママ友たちと「夫の実家に行くのがつらい」という話になったことがあったのね。これもジェンダーの問題だと思うんだけど、夫の実家に行くと“透明化”されちゃうのがしんどいという声が結構あって。

清田:透明化というのはどういうこと?

田房:特別な害があるとか、意地悪されるとかじゃないんだけど、夫の家族や親戚たちの中に入ると「子どもの世話をするためだけにいる人」あるいは「家事を手伝うためだけにいる人」って存在になる感じ。それ以外の言動は一切しないし、なんの情報も発しないで薄い笑みを浮かべて黙ってる。つまり「THE 嫁」だよね。アイデンティティとかは一切消して、まるで人格がない人間かのようにそこにいないといけない。それはまわりの暗黙の要求でもあるし、私たち「嫁」自身の中にそういう「嫁モード」になるスイッチが搭載されちゃってるんだよね。でも嫁モードってものすごく息苦しいから、数時間が限界だよねって話で盛り上がった。

小川:すごくわかる。なんの仕事をしてるとか全然聞かれないって話はまわりからもよく耳にする。逆だと絶対にないですよね。妻の実家に行けば夫は普通に「仕事はどう?」とか聞かれるわけで。

清田:人間ではなく、嫁や母といった“機能”としてしか見られないってことだよね。俺も30歳のとき、当時付き合っていた恋人との間に結婚の話が持ち上がり、彼女の親族が集まる場所に行ったことがあるんだけど、やれ年収はいくらだ、親の介護はどうするんだ、実家の相続はどうなってるんだって、ひたすら尋問みたいなのを食らってしんどくなったことがある。質問しているのは結婚相手として相応しいかを査定してるだけで、俺という人間にはまるで興味がないって感じだった……。

田房:そっか、男性もそうやって「婿査定モード」を発信されて無人格みたいにされることあるんだね。

なぜ夫の名前を先に書かなきゃならないのか

田房:ちょっと前は「女は仕事してるわけがない」くらいの感覚でいる人が多かった気がするけど、そういう扱いをされることがいまだにあって、結構びっくりする。私の女友達は携帯電話の契約をしたとき、収入の欄に自分の年収を書いたら、ご主人の収入ですねって前提で話を進められて、「いやいや私の稼ぎだよ!」って腹が立ったと言っていた。

小川:「妻=夫に養われてる専業主婦」って先入観、本当にやめて欲しい。

田房:40代になると、夫より収入が多い女の人もすごく多いんだよね。みんなわざわざ言わないけど、「実は私も」っていう人ってこんなにたくさんいるんだ! って思うもん。そういう現実と、社会の想定しているイメージが笑えるくらい合ってない気がする。

小川:「主人」という言葉に象徴されるように、いまだに「男=家長」ってイメージが根深く残っている。実際、企業や行政の手続きで必要になる書類では、最初に夫の名前を書くことになってるケースがほとんどですよね。あれって要するに、家長を申告せよという話なんだと思う。

清田:確かに……。我々の世代だと小学校の名簿も男子が謎に先だったし、例えば婚姻届なんかでも、夫が先に名前を記入することになっているよね。

田房:婚姻届は夫→妻で、出生届は父→母の順番なのに、保育園の書類だけは逆になってるところがあったよ。左側に母親の欄があった。ちゃんと働いているか、どうしても保育が必要なのか、っていう審査の用紙なんだけど、「父親が働いてるのは当たり前」っていう前提なんだよね。その上で、「母親の仕事の内容がそんなに絶対しなきゃいけないものなのか」って視点で作られた紙なわけ。

母親が子を預けて働くには、それ相応の仕事内容、理由がないとダメですよっていうこと。実際、それで判定して落とされちゃうのが現実だし、保育園が足りなくて保育園に入れないから仕事を辞めるっていう母親がたくさんいてさ、「勤労の義務」って国民の義務じゃなかったんですか? って感じだよ。

小川:すごく変だと思う。

田房:「あなたは本当に、子育てを他人に任せてまで、働く価値のある人間なのですか? 母親のぶんざいで。あなたの仕事はそんなに重要なのですか? 女のぶんざいで」みたいな感じなんだよ。大げさに聞こえるかもしれないけど、ほんとに保育園審査の期間ってそういう風に社会から言われてるようなメンタルになってくるんだよ。それは「嫁モード」的な、こっちも個人的に内包しているものというより、実際、母親に対してそういう視点を社会が持っているんだと思う。

出生届もなんか屈辱的だった。産んだの私なんだから、「私が産んだ○○ちゃんです!」って書きたいのに、夫の名前を書く欄のほうが多いんだよ。世帯主が夫だと。しかも、こういう話を人にしたら「だったら世帯主を変えればいいのでは?」って言われたこともあったのね。いやいや、そういう問題じゃねえんだよっていう(笑)。

清田:個人的に変えればいいってことじゃなくて、そもそもなんでそういう前提になってんのかっていう話だもんね……。

田房:そうそう、そうなんだよ!

小川:制度自体に差別が埋め込まれてるケースって本当にたくさんありますよね。

男性優遇社会から得られる利益だけはちゃっかり享受?

田房:あと、保育園の名簿とかでもそうだけど、保護者と子どもの名字が違うだけで「複雑な家庭なのかな?」みたいになっちゃうじゃん。別にそれでなんか裏でコソコソ言われたりはしないけど、本当は単なる事実婚なのかもしれないのに、なんかそれだけで目立っちゃったりとか、そういうのもすごくおかしいなと思う。だからみんな、目立たないように事実婚であっても名簿上の名字は揃えたりとか、逆に何事もないように振る舞うって選択をとる人もいる。その辺が、個人の「がんばり」に頼ってる形になってるんだよね。

清田:あと、離婚してシングルマザーになっても、子どもの名字を変えないために別れた夫の姓を名乗り続ける人も多いって言うよね。

小川:うちの夫の家も同じで、義理のお母さんは離婚をしているんだけど、旧姓には戻さなかったみたいなんですよ。で、私もその名字になっているので、つまり別れたお父さんが不在のままみんなでその姓を名乗っている状態で、ちょっと奇妙な感じになっている(笑)。

田房:家父長制のからくり(笑)。ところで、清田さんの中にはどういう葛藤があったの? しおちゃんが清田姓になることで名字の問題はすんなり決まったと言ってたけど。

清田:彼女の提案に対し、まさに“すんなり”乗ってしまったことに、ちょっとした罪悪感が残ったというか、そういう感じがあるんだよね。先日しおちゃんに改めて話を聞いたんだけど、よくある各種名義変更の手間も、たまたま免許の更新が重なったりでさほど面倒に感じなかったみたいだし、名字が変わったことに関しても、彼女いわく「アカウントがひとつ増えた感じがあり、都合良く使い分けられるためむしろ便利」ということだった。だから彼女に対する罪悪感ってことではないのかもだけど……。

小川:だけど?

清田:要するに俺は、「姓を変えるのは女性側」という社会通念みたいなものに乗っかったわけだよね。それで、名字変更を検討したり名義を変更したりというコストを背負うことないまま事が進んでいった。これっていわゆる“下駄”以外の何ものでもないと思うんだけど、「へえ〜、清田さんって普段は男女平等とか言ってるわりに、男性優遇社会から得られる利益だけはちゃっかり享受してるんですね〜」って、心の中の“リトル清田”が厳しくツッコミを入れてくる感じがあるというか……。

小川:リトル清田(笑)。

清田:あと二人の話を聞く中で、その葛藤自体もなんだか薄っぺらいものだったかも……という気にもなってきた。というのも、田房さんや小川さんが抱いた違和感って、人間性が認められなかったり、付属物のように扱われたりすることに対する疑問や憤りに根ざしたもののように感じるけど、俺が夫婦別姓にしたいと思ってたのは、「フェミを自認するなら別姓にすべき?」くらいの、単に体裁やロジックを気にしてのことだったような気がしてきた……つらい。

田房:そこは難しい問題だね。私も男性側だったらどういう風に考えていただろう。いずれにせよ、女が男の姓に変えるというシステムの奇妙さが元にあるよね。

清田:こういうことは生活の細々したシーンにも立ち現れると思う。後編ではそういった話について語り合っていけたらと思います。

【イベントのお知らせ】
2019年8月16日(金)の夜にNaked Loft(東京都新宿区)で清田さん、田房さん、小川さんのトークイベントが開催されます。題して「クソリプ研究所・真夏のお焚き上げ大会〜なぜフェミ発言にはヤバいリプが飛んでくるのか〜」。SNSに飛び交うクソリプの事例を紹介しながら、クソリプを飛ばす人々のマインドやモチベーションなどについて研究。詳細はコチラ

後編は8月15日(金)公開予定です。
(清田隆之/桃山商事)