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今こそ観ておきたい…戦争のむごさと無意味さを塚本晋也監督が描いた『野火』は “忘れたらいけない” トラウマ映画だ【最新シネマ批評】

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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップしたのは、塚本晋也監督作『野火』(2015年7月25日公開)です。1959年に市川崑により映画化された大岡昇平の同名小説を、塚本晋也監督の脚本、製作、主演により再び映画化。

今や世界の塚本といっても過言ではない塚本監督ですが、この映画は塚本監督、念願の映画化作品です。戦地をさまようひとりの日本兵が体験した世界を描いており、主人公が見た世界を観客も疑似体験できるというか……。かなり衝撃的な映画ですが、戦争をしない国ニッポンが戦争へと傾きかけている今こそ見るべき作品です。

【物語】

第二次世界大戦末期、フィリピンのレイテ島。田村一等兵(塚本晋也)は、結核を患い、野戦病院へ行くものの、負傷兵は多く、食糧もなく、田村は追い返されてしまう。

しかし、部隊に戻っても彼の居場所はなく、田村はレイテ島をさまよううちに、数人の兵士たちに出会う。伍長(中村達也)、安田(リリー・フランキー)若い兵士・永松(森優作)たちは生きることに必死。しかし、安田らは生きるために常軌を逸した行動に走っていた……。

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【戦争映画のタイムリミット】

塚本監督は、ずっとこの映画を作りたかったそうですが、戦争映画はお金がかかるためこれまで着手できなかったとか。しかし、時間が立ち、戦争経験者が80才を超えていることに焦りを感じ、映画製作に向けてインタビューを開始しました。戦争を知る人々が少なくなってきた今、再び戦争をしようとする動きを感じた監督は「このままではこの映画は作れなくなるかもしれない、作るのは今しかない!」と、映画化に踏み切ったのです。

この映画の公開は、いい時期かもしれません。日本は戦争をしないはずなのに、そうではない日本に変わりつつある、恐ろしいことが起こりそうな気がする……と誰もが思っています。だからこそ、この映画を見るべき。なぜなら、みんなが恐れていることが『野火』には描かれているからです。

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【いったい何と闘っているのか】

レイテ島でさまよっている日本兵は田村だけでなく、多くの兵が帰りたいけど帰れない状況にいます。彼等は捨てられた日本兵なのかもしれません。敵はいつ攻めてくるかわからない、食糧もない、どうしていいのかわからない中、時間はただ過ぎていくだけ。なぜ生きているのかさえわからない彼らは、さまよう肉の塊です。そしてある日突然、ふいに撃ち殺されるのです。

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戦争映画にありがちな、かっこ良さげな撃ち合いや戦闘機をかっ飛ばして勇ましく闘う兵士なんて、この映画には出て来ません。肉体は衰えていき、死の恐怖にさいなまれ、やがて理性を失い、狂気に走るのです。でなければ、あんなことできません。(それが何なのかは、この作品を見てください)

また、この映画は、説教くさいメッセージなどは一切ありません。主人公・田村の見た戦場がすべて。そこに言葉なんていりません。

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【トラウマ映画になるでしょう】

田村と一緒にレイテ島をさまよい、壮絶な戦争現場で臭ってきそうな死体の山を見て……。映画が終わったあと、記者はかなり気持ち悪くなりつつ「映画で良かった、本当に良かった」と胸をなでおろしました。戦争が嫌とかいう気持ちよりも、ただ怖かった。まさに地獄を見たというか、これを書いている今も思い出して、ちょっと気持ち悪い……。

「戦争ってヤバイよね~」「なんか怖いよね~」と、なんとなく言っていた人も『野火』を見たら青ざめて、トラウマになるでしょう。でもそれこそ塚本監督の狙いかも。

戦争に傾きつつある日本に住む、みんなに見てほしい。見れば必ず何か感じるものがあるはずです。

執筆=斎藤香(C)Pouch

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『野火』
2015年7月25日より、渋谷ユーロスペース、立川シネマシティほか全国順次ロードショー
監督・脚本・:塚本晋也
原作:大岡昇平
出演:塚本晋也、リリー・フランキー、中村達也、森優作ほか
(C)SHINYA TSUKAMOTO / KAIJYU THEATER

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オリジナル記事: 今こそ観ておきたい…戦争のむごさと無意味さを塚本晋也監督が描いた『野火』は “忘れたらいけない” トラウマ映画だ【最新シネマ批評】
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