共働き世帯数は年々増加傾向にあり、2017年には専業主婦世帯数の2倍近くになっています。少しでも家計のプラスになるようにと、仕事を始める女性が増えているのではないでしょうか。
扶養のことを考えながらパートをする人も多く、「○円の壁」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。
収入に応じて所得税、住民税などの税金がどのように変わるのか、パートで働くA子さん、B子さん、C子さんの状況に合わせて計算してみます。
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時給で働くことが多いパートですが、実際の手取り額の計算式は次のとおりです。
1カ月の勤務時間×時給=パート給与
パート給与−(住民税+所得税+社会保険料)=手取り額
住民税や所得税、社会保険料は一定の収入を超えた場合にそれぞれ対象になるため、「一定の収入」がいわゆる「○円の壁」という言葉で表現されているものです。
それでは、〝壁〟について一つずつ見ていきましょう。
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住民税は1年間の収入に応じて確定した税額を、翌年度に納税するというものなので、働き出した初年度は引かれません。逆に言えば、前年の収入に対して掛かるということなので、その点は注意しておきましょう。
個人の住民税は所得金額に比例して課税される「所得割」と、課税額が一律の「均等割」の2種類あり、合計金額が「住民税」となります。
所得割は前年の所得額に10%の税率が掛かるものです。均等割は所得金額にかかわらず、一律で課税されるもので、都民税は1500円、区市町村民税は3500円となるため、東京都の場合は5000円になります。
年収100万円の場合、給与所得控除65万円と住民税所得割の課税基準額35万円を引くと、課税所得が0円となるため、住民税はかかりません。
給与が100万円以上の場合(東京都のケース)
(年間給与-100万円)×所得割10%+均等割5000円になります。
住民税は所得控除などの計算方法も含めるとかなり複雑なので、ざっくりと「年収100万円以下は税金が掛からない」「税額は給料の10%ぐらい」と覚えておくと良いでしょう。
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ここでも、住民税と同様、給与所得控除65万円を引いた金額が給与所得となります。さらに、所得税の場合、所得から基礎控除として一律38万円が差し引かれます。
控除額を計算すると、
65万円+38万円=103万円
となり、この金額を超えると、所得税の課税対象となります。
日本では所得税法上、月給から所得税を天引きをする「源泉徴収」が行われています。給与所得者が自分で確定申告をしなくても納税できるようにという制度です。
毎月の給料から社会保険料を差し引いた額が8万8000円以上になると、源泉徴収の対象となります。
源泉徴収されても、年収103万円以内なら、引かれた分は年末調整で戻ってきます。パートの人が年末になると、働く時間を減らすのはこのためです。
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年収が106万円を超えて、かつ社会保険に入らなくてはいけない方は以下のいずれかに該当する人です。
この金額は雇用契約書に書かれた数字を元に決まるので、残業代などは含まれません。
月額8万8000円を1年間受け取ると105万6000円となることから、「106万円の壁」と言われています。
配偶者の社会保険(健康保険)の扶養に入るためには、年収130万円未満が条件となっています。そのため、年収が130万円を超えれば、自分で社会保険に加入しなければなりません。これが、「130万円の壁」です。
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これまでの内容を踏まえて、時給や働き方によって手取り額がどう違うのか、具体的に計算してみましょう。(いずれも東京都のケース)
月に13日間働いたとすると、
・月給:8万5800円
6時間×13日間×1100円=8万5800円
・手取り:8万5137円
8万5800円-663円(住民税)=8万5137円
・年間給与:102万9600円
8万5800円×12カ月=102万9600円
【所得税】掛からない。 年収103万円までは掛かりません。月給で見ても、8万8000円以下なので掛かりません。
【住民税】663円/月
年収102万9600円−100万円=2万9600円
(2万9600円×10%)+5000円(均等割)=7960円
年間で7960円なので、12で割ると月額およそ663円となります。
月に13日間働いたとすると、
・月給:9万200円
(6時間×13日間+4時間)×1100円=9万200円
・手取り:8万9970円
9万200円−230円(所得税)-1080円(住民税)=8万8890円
・年間給与:107万9640円
8万9970円×12カ月=107万9640円
【所得税】230円が源泉徴収される。
所得税法によって、月給8万8000円以上の場合、給料から強制的に引かれることになっています。
B子さんは今月多く働いたので月給から源泉徴収されていますが、年収が103万円を超えていなければ、年末調整で差額が戻ってきます。
【住民税】約1080円
107万9640−100万円=7万9640円
(7万9640円×10%)+5000円(均等割)=1万2964円
年間1万2964円なので、12で割ると月額およそ1080円となります。
月に17日間働いたとすると、
・月給:11万2200円
6時間×17日間×1100円=11万2200円
・手取り:9万2511円
11万2200円−(1万65円(厚生年金保険料)+5445円(健康保険料)+336円(雇用保険料))−540円(所得税)-3303円(住民税)
=9万2511円
・年間給与:134万6400円
11万2200円×12カ月=134万6400円
【所得税】540円が源泉徴収される
さきほどの表の「月給-社会保険料(厚生年金保険料+健康保険料+雇用保険料)」の額に当たる箇所を見ると、540円になります。
【住民税】約3303円/月
134万6400円−100万円=34万6400円
(34万6400円×10%)+5000円(均等割)=3万9640円
年間3万9640円なので、12で割ると月額およそ3303円となります。
【社会保険料】1万5846円
C子さんから社会保険料がかかるようになります。
社会保険料の加入条件は、年収130万円なので、毎月の給料から厚生年金、健康保険、雇用保険といった「社会保険料」が差し引かれることになったというわけです。
(写真=Batkova Elena/Shutterstock.com)
最後は、控除対象配偶者に関する壁のお話です。
2017年までは配偶者の年収が103万円までの場合、配偶者控除38万円、141万円以内であれば段階的に配偶者特別控除が受けられました。
2018年の配偶者特別控除の税制改正により、夫の収入条件が加わると同時に配偶者の年収が150万円まで引き上げられました。これによって、今までより多く働いても、控除が受けられることになり仕事をする時間を増やした人もいるのではないでしょうか。
およそ年収201万円で控除が0円となることから、最後の壁は「201万円の壁」と言われています。
夫の収入条件は3段階に分けられ、1220万円(合計所得で1000万円)を超えると配偶者控除の対象にならないというのが改正の大きなポイントです。
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女性活躍のための制度が整備されるとともに、働きやすい環境も整いつつあります。壁の中で社会と関わりを保っているのを心地良いと考えている人もいる一方、長い人生もう少し社会と深く関わってみようかな?なんて思う人も少なくないでしょう。
パートで仕事をしながら、やりがいや新たに興味を感じることを見つけたら、自分のキャリアと捉えてステップアップしてみるのも良いでしょう。
また、厚生年金に加入することは老後の年金を増やすことにもつながります。家計収支としての損益分岐点を見極めて、思い切って壁を超えて(収入を増やして)みてはいかがでしょうか。
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