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スパイスカレーって、なに!? インド料理店では使ってはいけないってホント!? カレーマニアが解説!

「スパイスカレー」の定義をご紹介。12年間1日たりとも欠かさずにカレーを食べ続けているカレーおじさん\(^o^)/こと縫田曉言さんによるカレー愛に溢れたコラム。カレー好き女子に送る「カレーなでしこ連載」106回目!

カレーの豆知識!「スパイスカレー」の定義とは?

スパイスカレー。カレーマニアの間では、皆が知っている共通言語ですが、最近はカレーマニアに限らず、グルメな人たちの口からもこのワードが出てくることが増えたように思います。それだけ世間に浸透しつつある言葉なのですが、実は確固たる定義のない言葉でもあり、多くの人々を混乱させています。

僕自身、多くの方から「スパイスカレーって、なに?」と聞かれることが増えてきました。それに対して正しく説明するのには時間が必要になるのですが、その答えを今回の記事でまとめてみたいと思います。

ただし、そんなに詳しい説明を望んでいるわけではないという方も少なくないでしょう。というわけで、まず最初にスパイスカレーの定義を簡単にまとめてみます。

【スパイスカレーの定義】
インド亜大陸の調理法をベースに、日本人ならではのアイディアやアレンジが加えられた、ルウを使わずにスパイスで作られた新しくて自由なカレーのこと。

スパイス
(c)Shutterstock.com

ひと言であらわすとこういうことではないでしょうか。ひと言ではないじゃないかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、複雑なものをひと言であらわそうとするから混乱が生まれるのです。詳しい説明はいらないんだという方のために、最初に定義づけをしましたが、より詳しく知りたい方の為に、この後、スパイスカレー、そしてそもそもカレーという言葉についても以下まとめていきましょう。

スパイスカレーという言葉を広めたのはカレー研究家の水野仁輔さんで、2010年に出版された水野さん本のタイトル「かんたん本格! スパイスカレー」が最初だと言われています。昔ながらのルウを使ったカレーではなく、スパイスを調合して作るカレーというような意味合いでその造語を生み出したそうですが、その本も好調な売れ行きを見せ、売り上げに比例するようにスパイスカレーという言葉を使う人は増えていったそうです。

三軒茶屋の新店「創作カレーMANOS」

▲三軒茶屋の新店「創作カレーMANOS」

つまり、小麦粉で作ったルウを使用した一般的なカレーではなく、スパイスと野菜などを合わせて作ったカレーのことをスパイスカレーと呼ぶわけですが、だったらインドカレーだってスリランカカレーだってスパイスカレーの範疇に入るのではないかと、このあたりが混乱を招いているひとつの大きな原因だと言えるでしょう。

スパイスカレーという言葉が使われる場合は、基本的にはインド料理やスリランカ料理など、インド亜大陸周辺の現地料理のことは指しません。インドやスリランカなどの料理の影響を受けながら、日本人が独自の解釈や工夫を加えて作った新しいカレーというものが増え、それらの総称が特になかったので「スパイスカレー」という言葉が、それらにあてられて広まったのではないかと感じています。

大分県 別府「青い鳥」

▲カレーが大いに盛り上がっている大分県 別府「青い鳥」

その新しいカレーがたくさん生まれたのが大阪です。大阪という土地は「おもしろければ良い」という考え方が多くの人にとっての共通認識としてあります。東京だと伝統的なものや、それに沿っていないと邪道と言われてしまうものも、大阪だと「おもろければええやん」とライトに許容されるというのは何となくイメージがつくのではないでしょうか。

どちらが良い悪いということではなく、大阪がそういう文化だということです。そしてそんな大阪だからこそ、それまでのカレーの概念を変えるような新しいカレーが数多く生まれ、そして、それがおもしろがられ、広まったのでしょう。「大阪はスパイスカレーの聖地」と言われるのもそのような理由からです。

大阪を代表するお店のひとつ「虹の仏」

▲ミシュランビブグルマンを獲得した大阪を代表するお店のひとつ「虹の仏」

また、大阪でカレー作りをしている人にはミュージシャンなどのアーティストが多く、飲食店や調理学校などで基礎を学んだのではなく、独自の発想で作ったからこそ邪道的なおもしろさと新しい美味しさが生まれたのだとも考えられますね。

この「邪道」という言葉、ここでは良い意味で使っているのですが、本来は良い意味とは言えません。だからこそインド本国の、現地の作り方をしっかりと学び、たゆまぬ努力と真剣だからこそのこだわりを持ってインド料理を作っているシェフには疎まれることもあります。「うちはスパイスカレーなんて出してない!」と声高に言う方も少なからず存在するわけですが、それも当然です。

カレー界の奇才「堕天使かっきー」

▲全国各地でカレーをふるまうカレー界の奇才「堕天使かっきー」

しかし、さらに深く突き詰めていくと、そもそも「カレー」という料理自体がインドにはないという説にぶち当たるでしょう。今となっては「Curry」は世界的に広まっている言葉ですが、インド料理としてはカレーではなく、コルマ、サブジ、キーマ、サンバルなど、それぞれが全て違う料理名がついています。ただ、それをインド亜大陸から離れた国の人が見ると、全て同じように見えてしまうので、それらをまとめて「Curry」と呼ぶようになったのです。

その語源についても諸説ありますが、タミル語で食事を表す「KARI」が元になったという説が有力です。ということはカレーは料理名というよりは食事そのものだということになります。

大久保の「魯珈」

▲東京スパイスカレー界を牽引する存在のひとつである大久保の「魯珈」

もう少し突っ込んでみましょう。実はインドの現地の料理名にも、その名前の由来がはっきりしないものがたくさんあります。例えばチキン65。65の意味は諸説ありすぎて結局わかりません。サグは青菜を使った料理ですが、その青菜は何かというのも、ほうれん草だったり、からし菜だったり、お店によって、あるいはシェフによって言うことが違うので結局何が本当なのかはわかりません。

代官山の間借りカレー「カリーヒルズ」

▲代官山の間借りカレー「カリーヒルズ」

インドの方は質問すると、とにかく何か答えてくれようとします。それが正しいのか間違っているのか本人たちもわかっていなくても、何か答えてあげないと、という善意で考えてくれているのです。ただし、その割には自信満々に言いきります。だからこそ誤解が生まれるのでしょうね。

このように、そもそもカレー自体が曖昧な定義のもの。その曖昧な中でジャンル分けしようとするのが日本人らしさだとも思うのですが、新しくて似たように見えるカレーが増えてきて、それに対するちょうど良い言葉がなかったところに、スパイスカレーという言葉が生まれたのでそれがあてはめられたわけです。

ですからスパイスカレーという言葉が生まれる前からあったスパイスカレー的なカレーについては、スパイスカレーの範疇で語られることが少ないのです。

静岡の名店「ロストコーナー」

▲静岡の名店「ロストコーナー」

僕はスパイスカレーが大好きです。同じように、本格的なインド料理もスリランカ料理もネパール料理も大好きです。カレー的な範疇から外れることもありますがタイカレーも大好きですし、昔ながらのカレー、つまり日本のルウカレーも、欧風カレーも大好きです。

スパイスカレーのおすすめのお店は全国にたくさんあります。今回、記事中で紹介させていただいているカレーは、そのおすすめの中のごく一部です。

カレーとは宇宙のようなもの。とにかく広く、深いのです。カレーについて考えだすとキリがありません。そして、カレーとは「知れば知るほど、余計にわからなくなっていくもの」だと常々感じています。

ですからスパイスカレーって何なのだろう? と考えるより、実際に食べてみれば良いのです。僕の尊敬するブルース・リー師父の言葉に「考えるな、感じるんだ!」というものがありますが、まさにそれ。

そして何でもジャンル分けしようとしすぎないのも大事かもしれません。ブルース・リー師父は「型にとらわれるな」とも言っています。いずれにしてもカレー界にも多様性が生まれているのは間違いありません。

スパイスカレーを食べてそれが気に入ったなら、スパイスカレーだけ食べるのではなくて、例えば好きなお店のシェフがカレーにハマるきっかけとなったお店を聞き、そこに行って食べてみて、またさらにそのお店のシェフのきっかけとなったお店を探っていくと非常におもしろいですし、そのようなお店の味を確かめることによって、最初に好きになったお店の凄さを再認識できたり、何より理解度が深まります。

難しいことは考えず、自由にカレーを食べ歩いていきましょう! ただし、お店への敬意は忘れずに。インド料理店へ行って「スパイスカレー食べたいです」なんてことは言わないように気をつけましょうね。