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いつか迎える死…発明家のおじいちゃんがユーモラスに教えてくれる感動作『ハッピーエンドの選び方』【最新シネマ批評】

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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回、ピックアップしたのは、イスラエル映画『ハッピーエンドの選び方』(2015年11月28日公開)です。これがとてもジンワリいい映画なのです。

おそらくPouch読者が見たら「幸福な人生の終わり方ってこと? まだ先のことじゃん!」と思うかもしれません。でも登場人物と同年代の人が見たら、いつかお迎えが来る日のことを考えたりするでしょう。例えばおじいちゃん、おばあちゃんとか……。また、身近な死を経験すると、どんな若い人でも、自分の人生の終わりについて考えるもの。

そんな風に、この映画は、鑑賞する年代によって作品の世界が変わる映画なのです。

【物語】

イスラエルのエルサレムにある老人ホームで、発明好きのヨヘスケル(ゼーヴ・リヴァシュ)と妻のレバーナ(レヴァーナ・フィンケルシュタイン)は仲よく暮らしています。ホームには仲間もおり、ヨヘスケルは声色を変えるマシーンを発明し、神さまのふりをしてホーム仲間に電話をして、希望を与えたり励ましたりしていました。
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そんなとき、友人の夫が「苦しい治療に耐えられない、安楽死させてほしい」と願います。彼の妻も「夫を楽にしてあげたい」と言っており、ヨヘスケルは本人がスイッチを押せば、楽に天国へ行ける装置を発明しますが、レバーナに強く反対されてしまうのです。
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【ユーモアの中に隠された深い愛情と死の世界】

『ハッピーエンドの選び方』はユーモアの中に愛と死を織り交ぜて、とてもセンスよく、かつ深い感動がジワジワと心にしみわたる映画です。発明家のおじいちゃんが、妻のために適量の薬が出るマシーンを作ったり、神さまの声になるマシーンを作って、仲間を励ますなんて爆笑です!

老人ホームの仲間たちはみんな死を考えずにはいられない年齢であり、認知症の傾向がみられる人もいます。そんな厳しい現実を描きながらも、随所にユーモアを散りばめて、観客を重い気持ちにしないシャロン・マイモン&タル・グラニット監督の手腕は見事です!

この映画が、ヴェネチア国際映画祭観客賞を受賞するなど、世界の映画祭をにぎわしたのも納得。泣かせる映画よりも、笑えて泣ける映画の方が描くのは難しいのですから。

【おじいちゃんとおばあちゃんが自ら運命を変える!】

マイモン&グラニット監督は、この映画についてこう語っています。

「『ハッピーエンドの選び方』は別れを描いた映画です。愛する人やあなた自身との別れ。そんな別れのときに、すべてをどう終わらせるかを選ぶ権利について描いています。この映画の人物は退職してリタイアした老人たちです。老人ホームにいると無気力になりがちですが、彼らなりに運命を変えようと決意するのです」

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老化で足腰が弱り、周囲に病人が多かったりすると、気がめいるものです。でもその不穏な空気に発明という特技を駆使して、自力で楽しい方へと行動を起こす主人公と仲間たちは本当に愛すべき人たち!

「これは実話ではありませんが、知人の経験に基づいています。人生の終わりに直面した知人を見て、私たちは思ったのです。体は病気でも意識がはっきりしているのならば、死と向き合い、乗り越えるための自虐的な皮肉やユーモアが有効だということに。ですから私たちはコミカルな要素を入れることで、感情的でシリアスなドラマになることを避けるようにしたのです」

と、マイモン&グラニット監督。

まさにそう! 親友のために作った秘密の安楽死のマシーンが外部にもれて、依頼が殺到なんてシニカルな一面もありますが、コミカルな要素が、死への恐怖を和らげているのです。

【年代によって感動が変わる映画】

20代、30代だと「まだまだやりたいことあるし!」と、死ぬことなんて考えられないはず。だって未来がありますからね。でも70代以上になると、ガラリと考えが変わり、この映画の安楽死マシーンを望む老人たちのように「楽に死にたい」と思うようになる人もいるはず。年代のギャップが映画の感想にストレートに現れるような気がします。

でも、若い人が見たらきっと新しい感情が芽生えるはずです。人生の終わりを見つめること、そのとき自分はどうしたいかということを。

パートナーや両親、おじいちゃん&おばあちゃんと見に行くと、意外といいかも。見終ったあとで感想を語り合い、とても良い時間を過ごせるのではないでしょうか。

執筆=斎藤 香(c)Pouch

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『ハッピーエンドの選び方』
2015年11月28日より、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
監督:シャロン・マイモン、タル・グラニット
出演:ゼーヴ・リヴァシュ、レヴァーナ・フィンケルシュタイン、アリサ・ローゼン、イラン・ダール、ラファエル・タボールほか
(C)2014 PIE FILMS/2-TEAM PRODUCTIONS/PALLAS FILM/TWENTY TWENTY VISION.

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オリジナル記事: いつか迎える死…発明家のおじいちゃんがユーモラスに教えてくれる感動作『ハッピーエンドの選び方』【最新シネマ批評】
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