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【正直レビュー】映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』は妻の奇行が強烈過ぎて、夫婦愛のドラマが食われている……!?

【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回は榮倉奈々&安田顕共演作『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』です。Yahoo!知恵袋の「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。どういうことなのでしょうか」という投稿が話題となり、ニコニコ動画でボーカロイド曲が誕生し200万回再生→コミックエッセイ化→映画化という異例の作品です。予告編では原作を裏切らない “死んだふりのヴィジュアル” が話題となり、とても楽しみにしていた映画なのですが……あれれ!? まずは物語からご紹介します。

【物語】

結婚してもうすぐ3年がたとうとしている加賀美夫妻。夫のじゅん(安田顕)はバツイチで、元妻とは結婚後3年で離婚しました。2度と同じ失敗はしたくないと思った彼は、ちえ(榮倉奈々)と再婚したとき「結婚3年目に、今後も結婚生活を継続できるかどうか、二人の気持ちを確かめ合おう」と約束をしていました。

ある日、じゅんが帰宅すると、ちえが口から血を流して倒れていました。慌てたじゅんは救急車を呼ぼうとしますが、ちえはムックリ起き上がり「驚きましたか?」とニコニコ。その日から、じゅんが帰宅すると、必ずちえが死んだふりしているのです……。

【前半は完成度の高い “死んだふり” に笑いが止まらない】

とにかく、ちえの死んだふりの完成度が素晴らしくて目を見張ります。回を増すごとにエスカレートしていき、頭に弓が刺さっていたり、ワニに食べられていたり、十字架を胸に突き立てられたドラキュラになっていたり……。こんな凝ったアイテムを毎回揃えて演じ切るなんて「すごい情熱だな、家庭内エンタメだな」と思い、前半は「よくやるなあ」とクスクス笑って見ていました。

【なぜ、ちえは死んだふりをするのか?】

やがてじゅんは「なぜ死んだふりを繰り返すのか?」と悩み始めていきます。しかし、ちえは独特な言い回しをするタイプで、「死んだふり」の理由を尋ねても「月が綺麗ですね」など、スルっとかわしていくのです。本心を見透かされたくないのか、煙に巻いているのかはわかりません。

「大好き」とか「3年経ったけど、私たち大丈夫だね」とかストレートに伝えることはありませんが、じゅんに対して愛情深いのは確か。しかし「なぜ死んだふりをするのか」に繋がる理由が見えてこないのです。

【コメディで突っ走ればよかったのに】

後半は、じゅんの同僚夫婦がギクシャクし始めたり、ちえのパート先の店主の孤独が描かれたりすることから「夫婦とは何だろう」と考えさせられていきます。

さらに、ちえを男手ひとつで育てた父親の愛などが垣間見えて、ほっこりいい話にも感じるのですが、肝心の「死んだふり」の理由については宙ぶらりんのままです。

私には「死んだふり」と「夫婦愛」を結び付けようとして結びつかなかったという風に感じました。「夫が帰宅すると、必ず死んだふりをしている妻」って相当な奇行じゃないですか。だったら、この奇行の面白さに乗っかって、思い切りドタバタコメディにしちゃえばよかったのに~と思いましたね。数々の「死んだふり」に対抗して、夫もリアクションのバリエーションを考えて、誰にも理解されないおかしな夫婦にしちゃった方が、夫婦愛につながったんじゃないかなあ。まあ、個人的な考えですが。

なんだかんだ書きましたが、ほっこり愛情物語が好きな人にはオススメです。また榮倉奈々さんのおかしな死んだふりを見たい人も必見。カップルで見て、あーでもない、こーでもないと言い合うのが楽しい映画だと思います。

執筆=斎藤 香(c)Pouch

『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』
(2018年6月8日より、角川シネマ新宿ほか全国ロードショー)
監督:李闘士男
出演:榮倉奈々、安田顕、大谷亮平、野々すみ花、浅野和之、品川徹、螢雪次朗
(c)2018「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」製作委員会