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【ネタバレあり】映画『クソ野郎と美しき世界』は役者と監督が愛をもって挑戦した映画 / バラバラのストーリーが最後に気持ちよく繋がります


【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、元SMAPの稲垣吾郎、香取慎吾、草彅剛が出演する最新作『クソ野郎と美しき世界』(2018年4月6日より公開)です。

ジャニーズ事務所を退所してから「新しい地図」という公式ファンサイトを開設し、新たな活動をスタートさせている3人。

その「新しい地図」の第1回劇場公開作となるのがこの映画。稲垣・香取・草彅が主演する4つの短編オムニバス映画で、監督・脚本を手がけた4名(園子温、山内ケンジ、太田光、児玉裕一)や、実力派揃いのキャスト陣も豪華です。これは見ないわけにいかないでしょう!

(以下、ネタバレを含みます)

【物語】

episode.1「ピアニストを撃つな!」監督:園子温
極悪人マッドドッグ(浅野忠信)に溺愛されていたフジコ(馬場ふみか)が逃げた。彼女が目指すのは愛するピアニストのゴロー(稲垣吾郎)。フジコを巡るマッドドッグと、ゴローの奇妙なバトルとは。

episode.2「慎吾ちゃんと歌喰いの巻」監督:山内ケンジ
歌を食べて生きる少女(中島セナ)と歌を奪われたアーティスト、慎吾(香取慎吾)。その歌は少女のお腹の中に?

episode.3「光へ、航る」監督:太田光
失った息子の右腕を探すクズな夫・オサム(草彅剛)と妻・裕子(尾野真千子)。二人の旅は沖縄へ。そこで彼らが出会ったのは……。

episode.4「新しい詩(うた)」監督:児玉裕一
ゴロー、慎吾、オサムたちが集まった「クソ野郎」たちの、歌と踊りのザッツ・エンタテインメント!

【イメージ通りは狙いかも?】

今回私は「稲垣・香取・草彅が主演する、短編オムニバス映画」ということ以外の情報を入れないまま、映画を鑑賞しました。

稲垣さんは天才ピアニスト、香取さんはアーティスト、草彅さんはクズな男という設定で、稲垣さんと香取さんは本人のパブリックイメージのまま。草彅さんだけは強面なアウトローで、以前に草彅さんが主演した『任侠ヘルパー』の彦一のような役柄でした。

どのキャラクターもあて書きのようで、「(この3人が)こんな役をやるんだ!」という新たな発見はありません。でも、あえてそうしたのかもしれないと思いました。

それは、episode.4「新しい詩」を見たとき。episode1~3のキャスト総動員で歌って踊るにぎやかなパーティの中、各エピソードの繫がりがここで明らかにされるのです。今までのことが「こんな風に繋がっていたんだ」というシーンが、「新しい詩」の中で次々に挿入されていくんですよ。

それはそのまま、彼ら3人がこれまでと変わらぬ関係を築いており、それぞれ支えてくれる人がいて、様々な繫がりを持っていることが表現されているかのよう。「僕たちは僕たちのまま、たくさんの人に支えられているし、ちゃんと前を向いているから心配はしないで」と語っているようでした。

episode.2で香取さんが歌を失ったように、確かに3人が失ったものはあると私は思います。でも失って終わりではなく、彼らの再スタートには、彼らがこれまで築いてきた繫がりが確実に存在するんだなあと。

3人はもうSMAPじゃないけれど、彼らの心は何も変わらない。彼らを支える人たち、彼らをよく知る人たちが、3人をしっかりサポートし、そして新しい出会いへと繋げていっているとも感じましたね。これは、3人からファンへのメッセージがつまっている映画なのです。

【爆笑問題の太田光監督の手腕が光る!】

個人的に、映画として抜群に良かったのはepisode.3「光へ、航る」。演出は、爆笑問題の太田光監督。太田監督にとっては『バカヤロー!4 YOU! お前のことだよ』の第1話「泊ったら最後」(1991年)以来の監督作です。

このお話は、亡くなった息子の腕を探す夫婦(草彅剛・尾野真千子)の旅物語。ふたりがマシンガントークで夫婦漫才のようなやりとりをしながら、田舎町で車を走らせるというところが、アメリカ映画のロードムービーのような空気感を持っています。そして、ところどころ太田光的なブラックジョークを炸裂させ、ニヤリとさせてくれつつ、失っても変わらぬ親子愛に涙させてくれます

草彅さんのチンピラ男役は、さりげなく父親の顔も垣間見せて、やはり上手い役者だなあとしみじみ……。ぜひ、草彅さんには太田監督と再タッグを組んで、これまで演じたことのない役で主演映画を撮ってほしいと思いましたね。今度は長編で!

【3人の新しいステージが始まった!】

『クソ野郎と美しき世界』を見ると、今度は3人のこんな姿を見たい、こんなことやってほしいという願いも膨らんできます。episode.4で、香取さんがノビノビと楽しそうに歌う姿を見て、3人のミュージカルが見たくなりました。もともと歌って踊れる3人なのだから、大いに可能でしょう。

そんな風に、希望の扉が開かれる映画『クソ野郎と美しき世界』。「稲垣、香取、草彅の新しいステージが始まった!」としっかり感じさせる映画ですし、思わず「頑張ってー!」とエールを送りたくなる映画でしたよ。

執筆=斎藤 香 (c)Pouch

『クソ野郎と美しき世界』
(2018年4月6日より、全国86(野郎)館で2週間限定ロードショー)
監督:園子温(episode.1)山内ケンジ(episode.2)太田光(episode.3)児玉裕一(episode.4)
出演:稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾、浅野忠信、満島真之介、馬場ふみか、中島セナ、尾野真千子、でんでん、神楽坂恵、野崎萌香、冨手麻妙、スプツニ子!、古舘寛治、新井浩文、健太郎
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