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「私が欲しくない?」女の園に傷ついた男がやってきて…『ビガイルド 欲望のめざめ』は女たちの嫉妬を妖艶に描いた作品です【最新シネマ批評】

【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が最新映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、レビューをします。

今回ピックアップするのは、ソフィア・コッポラ監督の最新作『The Beguiled / ビガイルド 欲望のめざめ』(2018年2月23日公開)です。

本作はクリント・イーストウッド主演作『白い肌の異常な夜』と同じ原作を再映画化した作品。といっても単なるリメイクではなく、女性目線を意識して脚本化されています。

美しさの中で描かれるドロドロの感情が恐ろしい……ソフィア・コッポラ監督の個性と力量がいかんなく発揮された一作になっています。

【物語】

1864年、南北戦争の頃。米・バージニア州にある女子寄宿学園の生徒が、森の中で負傷した北軍兵士マクバニー(コリン・ファレル)を見つけます。兵士を寄宿舎に連れて帰り、かくまって介抱しますが、女の園に現れた野性的な男性に、女性たちの心はざわめきます。

好奇心は隠せず、彼に気に入られようと行動したり、牽制しあったり、嫉妬したり……。女性たちの秩序ある生活と心は激しくかき乱されていくのです。

【秩序を乱していく、女たちの異常な好奇心】

とにかく映像がとても美しく、めくるめく美麗絵画を見ているようです。女優たちの衣裳、寄宿舎のインテリア、森の景色、光のまわり方など、すべてが計算された隙のない美を見せています。まさに女の園に似つかわしいヴィジュアル。

そこにワイルドな兵士マクバニーが連れてこられ、真っ白な世界に変化が訪れます。彼女たちは「怪我をした可哀想な兵士を助けてあげなければ」と思いますが、内心は「男が来た」と心がザワザワ。


目の前に現れた生身の男性の魅力に抗えず、釘づけになり、自分が一番彼に近い女になろうとするのです。

これがイケメンじゃなかったら、こうはならなかったんだろうけど、演じるのはコリン・ファレルだし、かっこいいし、野性味あふれていて「この人ならば私をここから出してくれるのではないかしら。私を女にしてくれるのではないかしら」と思っちゃうんですよね。

【ハーレム状態から地獄へと突き進む兵士】

さて、ケガをした兵士・マクバニーは最初こそしんどそうですが、女たちが自分に夢中とわかると彼女たちを支配しようとします。なにしろハーレム状態ですから。

特に女教師エドウィナ(キルステン・ダンスト)は彼に本気! 彼もエドウィナを選ぶのですが、もともとプレイボーイの彼は積極的なアリシア(エル・ファニング)ともいい関係に。

でも、そこからが地獄の始まりでした。怒ったエドウィナの行為によって、マクバニーが足を負傷。重症の彼を見て、園長マーサ(ニコール・キッドマン)は恐ろしい決断を下すのです。ここからが怖い、最後まで怖い!

【美しい映像世界の中で展開する歪んだ欲望】

このようにマクバニーが来てからの女の園は、嫉妬と欲望でドロドロなのですが、映像はさすがソフィア・コッポラ。最初から最後まで完璧にきれいです。

森の中にたたずむ洋館、清楚なドレス、白い肌、ブロンドの髪などウットリするほど。それゆえに、マクバニーと彼女たちの渦巻く欲望が生々しく浮き上がってくるのです。

またコッポラ監督は、映像描写や少ないセリフで状況や登場人物の心を映し出すのがうまいです。

観客を甘やかさないというか、考える、想像する余地を与えてくれる。コッポラ監督の映画は描写力が抜群にすぐれていると思います。

この映画でも、マクバニーは「男として女たちを従えたかったのか、それとも北軍として南軍の女を支配することで勝利を味わいたいと思ったのか」と考えたり、「園長もマクバニーに惹かれていたようだけど、あの恐ろしい決断はどういう心境なのか」など、映画を見終ったあといろいろ考えを巡らすことができる、余韻に浸れるところが良いです。

本作は彼氏と行くと「オンナって怖い」とビビリそうなので、女同士で見て、いろいろ語り合うのがいいかもしれませんね。





執筆=斎藤 香 (C) Pouch

『The Beguiled /ビガイルド 欲望のめざめ』
(2018年2月23日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか、全国ロードショー)
監督:ソフィア・コッポラ
出演:コリン・ファレル、ニコール・キッドマン、キルステン・ダンスト、エル・ファニング、ウーナ・ローレンス、アンガーリー・ライス、アディソン・リーケ、エマ・ハワード
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