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「どう伝えるか」から議論が生まれる 炎上するCMとしないCMその分かれ道とは?

なぜか同じように繰り返されるCM炎上。「どうしてこのCMが誕生したの? 制作過程で気づかなかったの?」と思ったことがある人も多いはず。炎上ポイントはさまざまですが、特に男女の描かれ方に起因するケースが多いようです。

そのような「これってどうなんだろう?」というCMについて考えるパネルディスカッション「CMから男女の描かれ方を考える」が、(公財)横浜市男女共同参画推進協会と(公大)横浜市立大学の連携により、10月19日、横浜市立大学エクステンション講座(企画・監修:佐藤響子教授)として、開催されました。

その様子を再構成・編集して3回に分けてお届けします。

(左から)梅田さん、鈴木、武田さん、haru. さん

(左から)梅田さん、鈴木、武田さん、haru. さん

<登壇者>
モデレーター 治部れんげ:ジャーナリスト
梅田悟司:クリエーティブ・ディレクター
鈴木円香:ウートピ編集長
武田砂鉄:ライター
haru. :大学生、HIGH(er) magazine 編集長
(敬称略)

家事はオンナの仕事なの?

■事例2 ユニバーサルホーム「ちょっと待ってね」篇
概要:洗い物や掃除、洗濯で忙しくしている母親(藤本美貴さん)に、女児が「ママ遊ぼ」と何度も声をかけるが、母親は「ちょっと待ってね」を繰り返す。その様子をソファーに座って見つめる父親。CMの後半では新居に引っ越した後の暮らしが描かれ「ママ遊ぼ」に笑顔で「遊ぼっか」と応える藤本さん。それを見た父親が「ちょっと待ってって言わなくなったね」と言い“ママの家事を楽(ラク)にする住まい”というメッセージが表示される。

haru.:白い服の男性は守護霊ですか?

会場:(笑)

haru.:うちは父がどこにでも連れて行ってくれるし、家事も全般やるので、あのお父さんの描かれ方に違和感がありました。家のことはお母さんがするものだと、ドラマやメディアで押し出されることがありますよね。お母さんの味とか。そういうCMもあると思うんですけど……。うーん。

治部:10歳になる息子と一緒に見ていると「まじ!?」と言っていました。「この人はお父さんなのか、なんなのか」と。もちろん、各家庭の状況によって見方は違うと思います。早く帰って家事をしたいお父さんもいるでしょうし。ただ、このCMでは、お父さんはソファのうえに、いる。

梅田:そうですね。大きなポイントとしては、先ほど、haru. さんもおっしゃっていた、「あの男性は誰なの? 親じゃないの?」ということ。そこにはさらに2つのポイントがあると思います。具体的には、女性は子どもを構うべきという話と、男性は家事をしない対象として描かれていること。

武田:“家事をラクにする住まい”の購入を促す CMですが、そもそも、今時、こんなに大きな家を買える人は、収入的にも限られますよね。その点、反応してもらうターゲットは限られ、そこに向けての露骨なアピールなのでしょう。共働きが増えている、現実的な働き方に合わせるならば、父親役の男性を藤本美貴がひっぱたいて終わる、というのが説得力を持つ終わり方じゃないかなと思うわけですが……。

会場:(笑)

武田:もちろん、各家庭での家事分担というのは、各家庭それぞれで決めればいいわけです。外から、「10-0だなんてありえない!」と目くじらを立てすぎる必要もない。ただし、CMとして見せる時には、そこに登場する夫婦が、「世の一般的な夫婦」というイメージと比較されることになる。これを流すことによって、どういった意味が浮上するのか考えるべき、ということなのでしょう。

鈴木:ジェンダーロールの観点から、「父親の役割はどうなんだ」みたいな批判もできるのはよくわかります。実際、マスコミに携わっている自分としてはそれをやってしまいがちだなと思うんですけど……。

ただ、実際に子育て中のママにとっては相当リアルな風景だろうな、と思います。これを見ている当事者、というか、これから家を買おうかなと思っているターゲットにとっては共感できる。よくある日常みたいな感覚もあるのではないでしょうか。

CM炎上全般に言えるなと思うのが、当事者が置き去りにされてしまいがちなことです。例えば20代の女性をターゲットにしたCMが炎上したとき、20代の女性は全然気にしていないのに、外野がとにかく批判する、みたいな構造もときたま起りますよね。そういうのをちょっと含んでいるかなという気がしました。

「何を言うか」と「どう言うか」

■事例3 「リラックス・サーフタウン日向」PR動画『Net surfer becomes Real surfer』
概要:全国のコアなサーファーたちの憧れの波が打ち寄せるお倉ヶ浜の海。みんながサーフィンをダイナミックにエンジョイする中、とぼとぼ歩くさえない青年。彼は先日、勇気を出して告白し、あっさりふられ、打ちひしがれて旅に出た。しかし、うなだれて歩いていると地元のイケメンサーファーにぶつかってしまう。今の彼にはまぶしすぎるイケてるその姿に、足早に逃げようとする青年。そんな青年の様子が気になって、思わず声をかけるイケメンサーファー。そして、サーフィンの猛特訓がはじまる…(宮崎県日向市のリリースより引用)

武田:オタクの誰それがスリムになって、ちょっとかっこよくなる、というのは、『電車男』しかり、この手のドラマでありがちな、鉄板の流れですよね。個人的には、表現云々の問題ではなく、自信に満ちた表情で波にぶつかっていく彼よりも、オタク気質な彼と仲良くなりたいなと思っちゃいましたね。

鈴木:すごくマッチョな動画ですよね。小麦色に焼けて背筋ムキムキみたいな男性がメンターになって……。すごくマッチョだなと思ったけど、オタクの彼が痩せてリアルサーファーになって、女子にモテたみたいなシーンが出てこなかったのはいいと思います。男性にとってはたまらないと思うんですよ。「みんなムキムキじゃなきゃダメ」みたいなのは。

haru.:私もどちらかというと、何も感じずに見られる動画だと思いました。作られ方もキレイだし。チャットの「www(ワラワラワラ)」みたいなところも、工夫されているなと思いました。

私もめちゃくちゃオタク気質で、ドイツで過ごした高校時代はオタクな子たちと一緒にいました。ちょうどお酒とタバコとクラブが年齢的に解禁されるタイミングで、そこに参加できることが青春のステータスみたいな感じでしたね。

最初は私たちも誘われていたんですけど、断っているうちに、「あいつらどうせ行かないし」みたいになって。その時期にクラスのヒエラルキー的ななものができました。それを思い出しちゃった。マッチョなほうにいないと、知らないうちにマイノリティーになっているというか。

梅田:何を伝えたいのかというのがかなり明確な映像ですよね。宮崎県の日向市には、いい波が来るよ、コミュニティもしっかりしているよ、と。みなさんが何も気にならずに見られるっていう理由は、what to say(何を伝えたいか)が明確で、理解しやすいからだと思います。一方で気になったという人はhow to say(どう言うか)の部分で引っかかったのではないでしょうか。例えば、男性らしさの押し付けとか。そこに対して、気になるか/気にならないかというところに議論が進んでいくのだろうと思います。

CMで新しい価値観を提供

■事例4 ビオレ メイク落とし「もっとメイクを楽しもう」篇
概要:前半は思い思いのメイクやファッションで、架空のメイクフェスを楽しむ若者たち。そして後半ではメイクを落としてシンプルなTシャツをまとった姿が映し出される。

haru.: 打ち合わせで、「最近印象に残っているCMってありますか?」と聞いていただいて、こちらをあげました。男女のいろんなモデルが出て来ることで、メイクを楽しんでいいのは女性だけじゃないと、自然に描かれていて、その点ではすごくいいのかなと思います。

また、私の友達も多く出演しているんですけれども、一人の有名女優さんだけじゃなくて、一般の人たちが出ているのも親近感があります。私たちの世代って、SNSが普及したりして、「この人が好き」というアイコンが多様化しているんです。それもよくわかるようなCMだと思いました。

武田:素敵なCMだと感じました。これまでのCMと比べても、女性が主体的にメッセージを発していますよね。日本のメディアでは、女性の主体的な動きを、イレギュラーなこととして捉える慣例があちこちに残っています。このところ、女性のスポーツ選手の記者会見やインタビューを見る機会が増えましたが、たとえば、競技中とは異なるメイクをしたり、洋服を着て登場するだけで、わざわざその理由や意味を突っ込んだりする。

主体性を見せられることに抗体がない人たちが多い中で、このCMのように、メイクをする・落とすという行為について、淡々としたメッセージで打ち出すのは有効なことだと思います。なにより、買ってもらいたいターゲット層に伝わりやすいですよね。

鈴木:そうですね。メイク落としのCMとしてはすごく新しいと思いました。これまでは、「ああもう疲れたー」「一日頑張った」みたいなシーンから始まるのが定番だったはず。けれどこのCMは、最初からハツラツとしていて、メイクも非日常的なものですよね。メイクを何のためにするのかという部分も、自由だという気がしました。モテとかウケとかを超越した、他者目線じゃないメイクみたいなものをぶっちぎって描いていて、「自分たちが楽しむためのメイクだよ。お祭り騒ぎ的なメイクだよ」という見せ方も新しいなと思いましたね。

梅田:僕も鈴木さんと同様の意見です。疲れて帰宅してメイクを落としてって、そういうシーンがステレオタイプとして描かれている中で、楽しんだ後にポジティブにメイクを落として、一日スッキリ終えるというのは表現としても新しい。

また、制作の視点で見るとちょっと尺が長くなっている*んですよね。これを仮に15秒で作りましょうとなると、自ずと疲れて帰ってくるシーンから始まるという、みんなが想像しやすいテーマを選びやすくなる。尺が長くなっていることで、前半と後半に分割できて、前半の自由度が高くなっているから、このようにポップで、少し新しい価値観を提供するようなCM共有ができているのではないかなと思います。

*60秒

(構成:ウートピ編集部 安次富陽子)