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上司と部下は「逃げられない親子関係」になりがち 従来の関係を覆す組織とは?

育休・産休に福利厚生、会社の中の制度をどれだけ活用していますか? 活用どころか、自分の会社にどのような制度があるかも知らない人もいるかもしれません。そして実際に、いざ申請しようと思っても制度が“負の遺産”と化してしまって「逆に働きにくい!」という現状も多々あるようです。

本来であれば、社会のあり方が変われば制度も変えていくのが理想的な姿。後払い決済サービスを手がける「ネットプロテクションズ」では、社員全員が発案者となって現在進行形の制度づくりを進めています。

同社で人事総務のゼネラル・マネージャーを務める、秋山瞬(あきやま・しゅん)さんに、「本当の働きやすさってなんだろう」をテーマに、2017年に誕生した産休・育休制度「ココット」と、2018年度下半期に本格的にスタートさせる人事評価制度「Natura(ナチュラ)」について話を伺いました。後編ではナチュラについてお届けします。

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【前編】産休・育休は「産む人」だけのものじゃない

上司と部下、一方的な評価制度を覆す新しい仕組み

——新しい人事制度「ナチュラ」とは、どんな制度なのでしょうか。

秋山瞬さん(以下、秋山):ひとことで言うと、マネージャー職を撤廃したフラットな人事制度です。従来のマネージャー層、リーダー層、メンバー層といったピラミッド型ヒエラルキーの組織決定制度を廃止して、メンバー同士が対等な立場で互いに成長し合うことを目的としています。

——リーダーのいない組織というと、ティール組織も話題ですよね。導入の経緯を教えて頂けますか?

秋山:まず弊社が理想とする姿に「自律・分散・協調」がありました。一人ひとりが意思決定をして、責任を持ちながら協調し合える関係を築こうという考え方で、これを本格的に具現化しようと考えた時にナチュラという制度に行き着いたんですね。ティール組織が話題になる前から制度作りを始めていたので、私たちが作りたいものと似ているね、タイムリーだねと社内でも盛り上がりました。

——話題になるより先に。

秋山:はい。それから目の前の課題として、弊社メンバーの50パーセントが入社1〜3年目と若く、十分なトレーニングを積む時間もないまま急ごしらえでマネージャーに抜擢せざるを得ないケースが発生していたんです。

「本来であれば徐々に評価や育成を経験したうえで、名実ともにマネージャー的役割になるのが正しいのに……」という課題感がずっとあり、今回思い切って導入に踏み切りました。

——なるほど。とはいえ、上下関係性がないフラットな職場環境ってリアルに想像できないんですが……。

秋山:上司と部下って、どうしても逃れられない親子関係のようになりがちです。その関係が、ヒエラルキーに沿って下から上へ続いていくのが従来の人事制度のイメージ。関係がうまくいっている場合は良いのですが、いずれどこかで歪みや依存が出てきてしまうんです。

たとえばウマが合わなくて言いたいことが言い合えないとか、気まずくて正しく評価しにくいとか。ナチュラは「評価者」と「被評価者」という一方通行な関係ではなく、互いに評価しあえる仕組みになっているので、固定的な上下関係によるコミュニケーション不足を避けることができます。

——たしかに、部下の立場からすればメリットがあるかも知れません。一方で、もともとマネージャー職に就いていたメンバーの反応が気になります。

秋山:思ったよりネガティブな反応は少なかったですよ。弊社のマネージャーが従来担ってきた「メンバーが気持ち良く働ける環境をつくること」という役割が、メンバーに根付いていたからだと思います。もともと皆さんが縁の下の力もち的に仕事をしていたので、名誉や権威にこだわるというケースが少なかったようです。

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メンバーを信じて制度をつくる。基本は「性善説」

——従来のヒエラルキー型人事制度を壊すことで、会社全体としての不安はありませんでしたか?

秋山:たしかに、ナチュラは役職による監視が外れるので、悪用乱用しようと思えばできてしまう制度だとは思います。それでも導入に踏み切ったのは、弊社が「性善説」に基づいた経営をしているからなんです。

そもそも弊社のビジネスが後払い決済というサービスであり、「クレジットテック」という概念に基づいたお客様に対する信用・信頼がキーワードになっているんです。組織側も同様で、一旦はメンバーを信用したうえで制度を使ってもらう。うまくいけば、よりハッピーに自己実現ができるような仕組みになっているはずなので。

——「性善説」……。会社の制度というカテゴリーでは、あまり聞いたことのないキーワードでした。

秋山:もしかすると目新しく感じられるかもしれません。ビジネスの分野も含め、私たちが常に目指す方針として「次の当たり前を考える」があります。人の働き方や会社のあり方ってどんどん変わっていくと思うんですが、先頭を切ってロールモデルを作っていきたいという気持ちを表しています。

とはいえ、「ネットプロテクションズだからできること」で終わらせたくはないんです。新しい制度だって、私たちだけが使っていても「当たり前」にはならないじゃないですか。体系化してアウトプットしていくことで、他社でもトライできるような仕組みに今後落とし込んでいくつもりです。

——ナチュラの先行きに関して、課題感はありますか?

秋山:そうですね……。まだまだメンバーの視座が狭いのかな、というところは感じますね。一人ひとりの自立心、意思決定の力を育てていくことが必要かな、と。それが育たなければ、ナチュラを導入した意味がなくなってしまうので。

弊社のカルチャー的に、意見や批判はつぎつぎに上がってくるんですよ。人事側としては、そういう姿勢ってすごくウェルカム。人事が作ったものが、必ずしもメンバーにとっていいものになるとは限らないですよね。

「制度が敷かれたからとりあえずやる」では、結局制度が形骸化して、いずれ使われなくなる。制度をつくる側と使う側、双方向で意見をぶつけ合って、できる限りズレのないところまでストレッチしていくことが今後の課題だと思っています。

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(取材・文:波多野友子、写真:大澤妹)